◆ ギアのセッティング
Spa の面白さ、難しさのひとつの要素として、ギアのセッティングをどうするか、ということがあると思います。
5 速のピーク(BRM は 6 速)は誰が走っても Stavelot 手前になりますが、4
速をどこに合わせるかで、2 種類のセッティングに大きく分類できます。さらに、4
速をショートにして 5 速と離す場合にどこまでショートにするか、3 速の扱いをどうするかで
2 種類に分類できます。ここでは、順にタイプ A、B、C と呼ぶことにします。
- タイプ A : 4 速を Burnenville - Malmedy に合わせるセッティング
Burnenville から Malmedy までを 4 速で走り抜けるセッティングで、ラップ中
5 速に入るのは Malmedy と Masta の中間から Stavelot までの 1 回だけになります。
このギアセッティングの利点のひとつに、Burnenville の途中で速度を落とすところを
4 速のまま行くので姿勢を崩しにくいとうことがあります。ここは、少し速度を落とすと同時にパワーオーバーステアに入れて全開で行くところなので、高回転域を使えるのでパワーオーバーステアを保ちやすいし失敗のリカバリーがしやすい、またシフトダウンの操作が減り少しでも簡単になるのが利点です。
欠点を敢えて挙げると、Eau Rouge、Malmedy といった路面がゆるやかなバンプになっていて車体が浮くところが、ちょうど高回転域で走ることになり、ホイールスピンが起きやすくアクセルコントロールが難しいところでしょうか。
- タイプ B : 4 速を Les Combes と La Source に合わせるセッティング
Les Combes と La Source 手前に 4 速のピークを持ってくるセッティングです。最も速度が出る
Stavelot 手前の 5 速を先に決めて他のギアを数字の上で平均的に割り付けた場合や、他の人のリプレイやセッティングなど参考にするものが無いと、最初は大抵このセッティングに近くなると思います。
このタイプ B は、タイプ A と違い Burnenville の途中で 4 速に落として走るのが一般的です。5
速のままでも行けなくもないですが、Malmedy は 3 速になるので、Malmedy の入り口で
2 段落とすより Burnenville で 1 つ落としておいた方が易しいと思います。Malmedy
の入り口は、姿勢の作り方と速度調整が難しいですから。
このセッティングの欠点は、La Carriere と Blanchimont の 2 箇所で、5 速からひとつだけ落として
4 速で行くのか、ふたつ落として 3 速で行くのかが中途半端になってしまうところです。ある程度速く走れるようになって各コーナーの脱出速度が上がってくると、3
速まで落とす走りにはならなくなると思いますが、車によっては 4 速での加速ではやや物足りなく感じるでしょう。これを不足に感じないくらいコーナーリングの速度を保てるのなら、上級者の域に達しています。
- タイプ C : Les Combes を 3 速で走るセッティング
タイプ B より 4 速を高めにし、タイプ B の欠点に挙げた La Carriere と
Blanchimont の 4 速の加速を重視したセッティングです。タイプ B よりも 4
速を高めにするので、Les Combes の前でも 5 速に入るようになります。4 速を高めにする分、3
速も高めにし、Les Combes を 3 速で、Stavelot と Eau Rouge は 4 速で行くことになります(Eau
Rouge は車によっては 3 速の方が良いかもしれません)。タイプ A、B が 2 〜
5 速を使って走るところを、タイプ C では 3 〜 5 速で走るわけです。
Burnenville は 5 速、Malmedy で 4 速になりますが、このタイプ C の難しいところは
Burnenville の途中の速度を落とすところを失敗してしまうとリカバリーが難しいところです(4
速が高いので、5 速のままで行くしかないため)。
このタイプ C では、Brabham の場合に 2 速も高めにして 1 速を使わないセッティングにする人もいます。
- <参考>
3、4、5 速の関係はタイプ A と同じですが、2 速以下のセッティングを GPL
Race Engineer を使って、GPL 単体ではセッティングできない範囲まで扱ってしまうセッティングもあります。具体的には
Brabham と Lotus の 1、2 速をもっとロングにするセッティングですが、個人的にはあまり薦めたくないので参考扱いにしました。
「GPLEA の車を使う(視点がデフォルトの車と異なる)のや、FOV をいじるのも、これらと同じオリジナルの
GPL の範囲外の調整だし、オーバーレンジのギアセッティングもチートではない」という意見もありますが、その一方で、「直接的な車のセッティングは、ギアだろうがサスペンションだろうがオーバーレンジは全部チート、GRE
の Fine Adjusting もチート」という意見もあります。
私はそれらを使っているからといって批判するつもりは無いし、チートであると強く排除する気もありませんが、後者の意見です。そもそも、そんなことをしてしまうと、全部タイプ
A で終わってしまってつまらない。セッティングしにくい車を工夫するのも楽しみのひとつですから。
- 車種別ギアセッティングの傾向
- Eagle
この Spa を最も速く走れる Eagle は、タイプ A のセッティングで全くストレス無く走れます。2001
年くらいからの世界記録のリプレイは全て見てますが、Eagle は全てこのタイプ
A のセッティングだったはずです。
- Ferrari
Ferrari もタイプ A で問題ありません。Eagle ほど高回転域が伸びないので、ロングにした時の低速加速に自信が無い場合は、低速域で稼ぐタイプ
B、C も良い走りができるはずです。
- BRM
ギアの段数はずれますが、他の車よりひとつギアが多い分低速域をカバーできるので、自然とタイプ
A のセッティングになるでしょう。
- Brabham
タイプ A に最も適合しないのが Brabham です。車体が軽く 2 速の吹け上がりが早すぎるため、Les
Combes からの 2 速から 4 速までをスムーズに繋がるように 3 速をセッティングすると、今度は
La Carriere では 3 速が高すぎる、というジレンマに陥ってしまいます。タイプ
B でもまだ繋がりが良いとは言えず、タイプ C が良いと思います。
このような、他の車の使用するギアの数より 1 つ少なくするセッティングは、2
速の吹け上がりが早すぎる Brabham ではたびたび使用されることがあります(G.
Huttu さんや A. Wilke さんの Kyalami のセッティングが代表的な例)。エンジンの高速域の伸びは無い分、トルクバンドが広いこと、車体が軽く空力も良いので全体的にむらのない加速が得られるといった
Brabham の特徴を活かした特異なセッティングです。
- Lotus
Brabham の次に軽くパワーもある Lotus も Brabham と同様の傾向ですが、タイプ
A でも我慢できる程度。Eagle ほどの最高速域の伸びはありませんが、どのセッティングでも走れます。
- Cooper, Honda
最も高速域が伸びない Cooper も、高速は伸びるが車体が重い Honda も、実際走ってみるとどのセッティングでも走れるのが解るでしょう。
これらは、あくまでも私が現時点で思う傾向であって、この車にはこのセッティングしかありえない、といったものではありません。例えば、Brabham
で 3 種類のセッティングを試してみても、今の私にはタイプ C がフィットしますが、最も合わないと思うタイプ
A とのタイム差は 0.2 秒程度でしかありません。人によって、走り方のくせや好みがあり、低速域の扱いが得意なのかどうかというような違いもあるので、どのセッティングが自分に合うのかは、実際に色々と試してみるしかないでしょう。Eagle
でタイプ C が走りやすいと感じたとしても、どこか間違っているわけではないのです。
1 車種にこだわるのではなく 7 車種とも乗るタイプの人は、あれこれ手を出すのではなく、全車のセッティングのタイプを一度同じにしてしまう、という方法もあります。車を変えてもギアチェンジの場所はほとんど一緒なので、ラインの取り方、走り方の習得という面を考えると、かえってその方が良いかもしれません。
実際、私も Eagle で 3:16 が出せるようになるくらいまでは、全車でタイプ
A を使っていました。当時はタイプ C のようなギアセッティングの可能性があるということを知らず、Brabham
もタイプ B だとどうもうまく走れずにタイプ A で統一してました。
走りやタイムが安定してきたなと思ったところで、趣を変えてタイプ B、C を試してみると、思わぬ発見やタイムアップがあるかもしれませんよ。